芝浜しばはま
浜で拾った大金を「夢だった」と言われた魚屋が、三年後の大晦日に真相を聞かされます。
あらすじ
魚屋の魚勝は酒におぼれ、十日から二十日ほど商売を休んでいました。女房に説得され、久しぶりに早朝の芝の浜へ出かけます。時刻を間違えて早く起こされたため河岸はまだ開いておらず、浜辺で時間をつぶしていると、砂に埋もれた革財布を見つけます。中には大金が入っていました。
大金を手にした魚勝は仕事をやめると言い出し、友人を呼んで酒盛りをして酔いつぶれます。翌朝、女房に起こされて金の話をすると、そんなことはない、芝浜にも行っていない、夢を見たのだろうと言われます。
衝撃を受けた魚勝は酒を断ち、心を入れ替えて働きます。三年後には裏長屋の棒手振りから、表通りに店を構える魚屋の主人になりました。三年目の大晦日の夜、女房は、あの金は夢ではなく実際に拾ったものであり、大家に相談して届け出たうえで夢だったと偽っていたことを打ち明けます。
魚勝は女房を責めるどころか感謝し、すすめられて三年ぶりに酒を飲もうとします。
湯呑みを口元まで運んだところで、魚勝は「よそう、また夢になるといけねえ」と言ってやめます。
成立と背景
三遊亭圓朝の作といわれ、一席ものの人情噺として「文七元結」と並ぶ作品に数えられます。
『落語三百題』によれば、圓朝が「酔払い・芝浜・革財布」の題で即席に作った三題噺といわれますが、『円朝全集』には見えません。幕末の三題噺の会で作られた祖型に、圓朝が手を加えて人情噺に仕立てたとみられます。圓朝以後、四代目三遊亭円生、四代目橘家円喬、初代談洲楼燕枝、初代三遊亭円右と受け継がれました。
「芝浜の革財布」の題で、六代目尾上菊五郎により歌舞伎でも上演されました。
演じてきた人
三代目桂三木助の口演が広く知られ、浜での日の出の描写や、三年後の大晦日に夫婦が福茶を飲む場面などの演出で知られます。十代目柳家小三治は、二日目の朝に亭主が自分から目覚める形にして女房の作為を薄めました。五街道雲助は魚勝が「死のうか」と言い出して女房に平手打ちされる演出を、三代目柳家権太楼は一時期、嘘に怒った魚勝が女房を殴る演出をとっていました。十代目金原亭馬生も別の視点から演出しています。
本によって違うところ
落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。
- 拾った金額は、『落語名作200席 上』が五十両あまり、『落語百選 冬』が四十八両と異なります。
ほかの芸能でも演じられます
この演目は浪曲でも演じられています。同じ題材でも、 芸能によって筋の運びや読みどころが変わります。
- 浪曲「芝浜の革財布」
落語「芝浜」の浪曲版です。外題は初代木村松太郎によるもので、関東節で演じられます。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『落語名作200席 上(角川ソフィア文庫)』京須偕充、KADOKAWA、2014年
- 『落語百選 冬(ちくま文庫)』麻生芳伸 編、筑摩書房、2004年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

