怪談乳房榎かいだんちぶさえのき
別題: 乳房榎、おきせ口説き、重信殺し、十二社の滝
絵師の妻と弟子の密通から始まり、殺された絵師の霊が我が子を守り敵討ちへと導く怪談。
あらすじ
絵師の重信は妻のおきせ、幼い息子の真与太郎と暮らしていた。重信の弟子になった浪人の浪江は、重信が寺の天井画を描くために泊まり込みで留守にしている間、病を装っておきせの家に通うようになり、やがて二人は深い仲になる。
天井画が完成すれば重信が帰ってきてしまうと考えた浪江は、下男の正介を脅して仲間に引き入れ、重信を蛍見物に誘い出した帰り道に殺害させる。重信は寺に戻って絵の続きを描き上げたように見えたが、そのときにはすでに姿がなかった。
おきせは浪江と夫婦になり子を身ごもるが、乳が出ないことから、浪江は重信の忘れ形見である真与太郎を疎んで殺すよう正介に命じる。正介は言われるままに真与太郎を滝に投げ込むが、滝壺に重信の亡霊が現れて子を助け、育てることと敵討ちを命じたため、正介は改心して子を連れて逃げ、寺の門番となって密かに育てる。
乳の出ない女が夢のお告げでその寺の榎の露を得て治ったという評判が広まり、乳の出なくなったおきせも露を求めて寺を訪れる。まもなくおきせは死に、正介と真与太郎が生きていることを知った浪江が寺を訪ねてくると、重信の亡霊の力を借りて正介と真与太郎が浪江を討ち、真与太郎は家を継ぐことを許される。
重信の亡霊の助けを得て正介と真与太郎が父の敵を討ち、真与太郎が家を継ぐところで終わる。
ほかの芸能でも演じられます
この演目は講談でも演じられています。同じ題材でも、 芸能によって筋の運びや読みどころが変わります。
- 講談「乳房榎」
絵師が弟子と自分の妻の密通によって命を落とし、死後もなお未完の天井画を仕上げる姿を見せる一席。演じられるのは重信殺しまでの前半部分がほとんど。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『古典・新作 落語事典』瀧口雅仁、丸善出版、2016年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

