牡丹燈籠ぼたんどうろう
別題: 怪談牡丹燈籠
侍に父を討たれた孝助が仇の屋敷に奉公し、萩原新三郎は死んだはずの恋人の幽霊に取り憑かれて命を落とす長編怪談。
あらすじ
旗本・飯島平左衛門は若い頃、本郷の刀屋の店先で浪人・黒川孝蔵を斬った。孝蔵の子・孝助は父の敵を討つ志を抱いて成長し、剣客として知られる平左衛門の屋敷に中間奉公する。平左衛門は孝助の稽古ぶりから、自分がかつて斬った者の子だと気づくが、素性を明かさぬまま稽古をつけてやる。
根津に住む浪人・萩原新三郎は、出入りの医者・山本志丈に誘われて飯島家の娘お露と知り合い、恋仲になる。しばらくして志丈から、お露とその女中お米が相次いで亡くなったと聞かされ嘆いていると、夜ふけに駒下駄の音とともに牡丹の燈籠を提げたお露とお米が現れる。二人は実は幽霊だが、新三郎はそれと知らず夜ごと逢瀬を重ねる。
新三郎の家作に住む易者の白翁堂勇齋が、家から漏れる女の声を怪しんで覗くと、二人の女の体は透けていた。新三郎の顔に死相が出ているのを見抜いた勇齋は、谷中の良石和尚のもとへ行かせる。和尚は如来像を貸し与え、経文を唱えることと家中の戸や窓に札を貼ることを命じる。困った幽霊は、新三郎の家作に住む借家人夫婦の伴蔵・おみねに百両を渡して札をはがすよう頼み、二人はこれに応じて如来像を盗み、札をはがす。幽霊は新三郎の家に入り込み、新三郎は翌朝死体で見つかる。
伴蔵夫婦はその後、幽霊から得た金を元手に栗橋で関口屋という店を開いて繁盛するが、おみねは伴蔵が馴染みになった女への嫉妬から不用意な一言を漏らし、伴蔵はおみねを殺してしまう。一方、飯島家では妾のお国と隣家の宮野辺源次郎が平左衛門殺害を企て、これを知った孝助は源次郎と思って斬りつけた相手が実は平左衛門だった。平左衛門は自分こそ孝助の父の敵だったことを明かして息絶え、孝助はお国と源次郎を追って本懐を遂げる。
続き噺として演じられる長編のため一席ごとの明確な地口オチはなく、新三郎の死や孝助の本懐成就をもって物語が締めくくられる。
成立と背景
三遊亭圓朝が幕末期、二十代前半に作った長編人情噺で、十五日間の寄席興行のトリで続き噺として演じられるよう作られた。
恋慕から幽霊が現れるという趣向と、牡丹模様の燈籠という設定は、中国明代の怪異小説集『剪燈新話』中の『牡丹燈記』がもとになっているとされます。
足のない幽霊に駒下駄をはかせ、その足音で近づいてくることを客に知らせる演出は、三遊亭圓朝の工夫とされます。
演じてきた人
六代目三遊亭圓生、桂歌丸、柳家さん喬、五街道雲助、立川志の輔、柳家喬太郎が演じてきました。
演じ方の違い
同じ演目でも、演者によって細部が変わります。分かっている違いを並べています。
- 『栗橋宿』の場面は六代目三遊亭圓生が近代的な心理ドラマとして仕上げた型が、桂歌丸・柳家さん喬・五街道雲助・立川志の輔・柳家喬太郎らに継承されている。
- 孝助の仇討ちの筋まで含めた全編は一席の人情噺としては上演されにくいが、立川志の輔と柳家喬太郎はそれぞれ独自の構成で全体を一席にまとめて演じている。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『落語名作200席 下(角川ソフィア文庫)』京須偕充、KADOKAWA、2014年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

