唐茄子屋政談とうなすやせいだん
別題: 唐茄子屋
勘当された若旦那が伯父に唐茄子(かぼちゃ)の行商をさせられ、売り上げを貧しい母子に渡してしまいます。
あらすじ
吉原の遊女に入れあげた若旦那が、親類の集まりで勘当されます。頼っていた遊女にも追い返され、居候先も次々に断られます。行き場を失って吾妻橋の上に立ったところへ伯父が通りかかり、身投げを止められます。
伯父は若旦那を本所の自宅へ連れ帰り、翌朝、唐茄子(かぼちゃ)の行商をするよう言い渡します。天秤棒の担ぎ方も知らない若旦那に、伯父は腰で担ぐこつを実演して教え、笠や弁当を持たせて送り出します。
本所から吾妻橋を渡り、浅草田原町のあたりで若旦那は石につまずいて転び、唐茄子を路上にぶちまけます。通りかかった土地の男が、道楽の罰で唐茄子を売らされていると聞いて、近所の知り合いに次々と声をかけて買わせ、荷を軽くしてやります。
残りを自分で売ろうと、若旦那は人気のない浅草寺裏の田圃で売り声の稽古をします。そのあと誓願寺店で、赤ん坊を背負った身なりの貧しい女房に唐茄子を売り、代金をおまけします。屏風の陰から出てきた男の子が空腹を訴えたので、自分の弁当を与えます。
浪人の夫が金策に出たまま戻らず、子どもに二、三日ろくに食べさせていないという事情を聞いた若旦那は、その日の売り上げをすべて女房に渡して帰ります。女房が返そうと追いかける途中、長屋の因業な家主に出会い、滞納していた家賃の代わりとして金を奪われます。
話を聞いた伯父は喜びますが、念のため確かめようと若旦那を連れて誓願寺店へ向かいます。着いてみると、女房は唐茄子屋への申し訳なさと暮らしの行き詰まりから首を吊っていました。家主が金を奪ったと知った若旦那は家主の家に踏み込み、茶漬けを食べていた家主の頭をやかんで殴ります。
役人の取り調べで家主はお叱りを受け、若旦那は人を助けた行いで奉行から褒美をもらい、勘当を許されます。首を吊った女房は手当てが早く、一命をとりとめます。人情噺なので、落ちらしい落ちは付きません。
成立と背景
六代目三遊亭圓生と三代目三遊亭金馬は「唐茄子屋」の題で演じ、五代目古今亭志ん生は「唐茄子屋政談」の題で演じていました。平成に入ってからは、ほぼ「唐茄子屋政談」に定まっています。本来の題は「唐茄子屋」で、お白洲での吟味の場面はもともと入っていません。
橋の上の身投げから始まる導入は、「文七元結」と同じ運びです。戦前の速記本には、善い行いが報われることと勤労を勧める型が多く見られます。
演じてきた人
六代目三遊亭圓生・五代目古今亭志ん生・三代目古今亭志ん朝・柳家さん喬が演じてきました。圓生については、若旦那を送り出す伯父が口ではやかましく言いながら涙声になる場面が挙げられます。女房が助かる形は、三代目三遊亭金馬の演出です。
本によって違うところ
落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。
- 若旦那の名。『落語名作200席 下』は徳之助、『古典落語(続々々)』『古典落語(選)』は徳三郎です。
- 首を吊った女房の結末。『落語名作200席 下』と『落語百選 夏』はどちらも助かる形ですが、『落語百選 夏』は、三遊派に伝わる別の台本では助からない形もあると付記しています。
- 『落語百選 夏』には、家主のこぶに塗ったのが薬ではなく七色唐辛子だったという種明かしが入ります。『落語名作200席 下』にはこのくだりがありません。
- 『古典落語(続々々)』と『古典落語(選)』は、伯父が確かめに行こうとするところまでで、そのあとの家主との一件は入っていません。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『落語名作200席 下(角川ソフィア文庫)』京須偕充、KADOKAWA、2014年
- 『古典落語(続々々)』興津要 編、講談社、1973年
- 『古典落語(選)』興津要 編、講談社、2015年
- 『落語百選 夏(ちくま文庫)』麻生芳伸 編、筑摩書房、2004年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

