落語の演目

火事息子かじむすこ

人情噺親子勘当江戸

近所の火事で蔵の目塗りを手伝いに来た火消しは、勘当した息子でした。

あらすじ

神田の質店・伊勢屋の近所で火事が起こります。類焼の恐れは去りましたが、人の預かり品を扱う商売なので、蔵の隙間を土でふさぐ目塗りをすることになります。町内の鳶頭は手が回らず、番頭が梯子で蔵に上りますが、高いところが苦手で、旦那が下から放る練り土をうまく受け取れません。

そこへ屋根から屋根を飛んで、定火消しの火消し職人の若い男が駆けつけます。男は番頭の紐を輪にして蔵の折れ釘にかけ、番頭の両手が使えるようにして手伝います。この火消しは、伊勢屋が勘当した息子で、家を出て火消し屋敷の臥煙になっていました。

番頭は旦那に、手伝ってくれた男に礼を言うよう勧めます。旦那は赤の他人だから会う義理はないと断りますが、番頭の説得で一度だけ会うことにします。息子は法被一枚の姿で全身の彫り物を隠しながら現れ、父と他人行儀な挨拶を交わします。

母親は、寒空に法被一枚の息子の身なりを不憫に思い、着物を持たせたいと言い出します。父はそんな者にやるくらいなら捨ててしまえと反対しますが、母は、捨てるくらいなら自分がもらいますと切り返します。父が「捨てりゃあ拾う奴があるから捨てろと言っているんだ」と言ったのを、母は許しが出たものと受け取り、紋付と袴の一式に供の小僧まで付けて息子を送り出す支度を進めます。

父がそんな改まった格好をさせてどうするんだと問うと、母は、火事のおかげで会えたのだから火元へお礼にやりましょうと答えます。

成立と背景

臥煙は、町火消しの「いろは四十八組」とは別に、江戸城など公儀の施設の消火を担った定火消しの職人です。真冬でも法被一枚に彫り物を見せる風体から、堅気の町人には嫌われていました。

江戸時代の勘当は、親類・五人組・町役人の連署で名主へ届書を出し、名主から奉行所へ勘当伺いを出して決裁を経て、人別帳から除籍されるという手続きでした。解除するにも同じ手続きが必要でした。同じ親子のすれ違いを描いた作品に、小山内薫の戯曲「息子」があります。

演じてきた人

八代目林家正蔵(彦六)と六代目三遊亭圓生の持ちネタでした。圓生は父の心情の表現で知られ、正蔵の口演は噺の古格に適った表現だったとされます。

本によって違うところ

落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。

この演目を調べる・聴く

落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。

出典

  1. 落語名作200席 上(角川ソフィア文庫)京須偕充KADOKAWA2014年
  2. 落語百選 冬(ちくま文庫)麻生芳伸 編筑摩書房2004年

上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

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