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由井正雪ゆいしょうせつ
駿河の紺屋の子として生まれた富士松が、剣術と軍学を修めて由井正雪と名のり、江戸に道場を構えて同志を集め、幕府転覆を企てるも失敗するまでを描く。
連続物(何席にもわたって続く長い話)。系統は御記録物(大名家に伝わる記録や御家騒動。金襖物ともいう。)
あらすじ
駿河の由井宿で紺屋を営む治兵衛とおなかの夫婦は、富士浅間神社への願かけの末に男の子を授かり、富士松と名づけた。名づけ親の僧良岱は、百姓から天下を取った太閤と同じく瞳が二つある子だとして、行く末を見込んだという。富士松は幼くして聡明で、近くの剣術道場に通ううち、10歳から高松半兵衛について剣術を習い始め、半兵衛が病に倒れると17歳で代稽古を務めるようになった。
長禅寺で出会った浪人楠不伝は、剣術と北条流軍学に通じた人物であった。富士松は師の道場を立て直したい一心から、木刀で不伝に不意打ちを仕掛けて力量を試し、その腕前に感服して指導を願い出る。不伝は高松の道場を引き受け、富士松は3年にわたって教えを受けた。不伝が江戸へ去った後、代稽古を務めていた富士松は慢心し、名も知らぬ旅の武芸者に打ち負かされたことをきっかけに、諸国修行の旅に出ることを決意し、由井民部之助正雪と名を改めた。
江戸牛込榎町に道場張孔堂を構えた正雪は、武芸十八般の指南を掲げて多くの大名家に出入りするようになる。当初は正雪を山師と疑っていた槍術家丸橋忠弥もやがて仲間に加わり、正雪は茶の湯の趣向に託した謎かけによって、忠弥の義兄柴田三郎兵衛をも味方に引き入れた。さらに、鉄誠道人と名のる僧に道灌寺再建の名目で焼身の儀式を演じさせ、僧を薬で動けなくして死なせながら集めた寄付金を、ひそかに軍用金として蓄えた。
京都・大坂での同志は、計画が幕府方に漏れたことで捕らえられ、あるいは自ら命を絶った。正雪自身も駿府の宿で自害したという。江戸で捕らえられた同志は老中松平伊豆守信綱のもとで厳しい取り調べを受けたが、自訴した佐原重兵衛が、これ以上の詮議は外様大名を巻き込み天下を乱すもとになると説き、取り調べは打ち切られた。慶安4年8月13日、丸橋忠弥ら磔刑73人・獄門317人が鈴ヶ森で処刑され、この一件により元号は慶安から承応に改められた。
本の章立て
46章『講談名作文庫』(講談社)の本文に出てくる見出しを、本の並びのまま挙げています。この巻の章は、話の中の場面を指しています。筋はここには書いていません。印の付いたものは、文字の読み取りに確信が持てなかった題です。
- 富士浅間の申し子
- 子供は正直なものじゃ
- 新米と古物の勝負
- ポカリとやられて発奮
- 南海の竜を驚かす
- 最初の同志、金井半兵衛
- 師に不似合いな若妻
- 娘の婿に河童はごめん
- 不義はお家のご法度
- 今も昔も恋は盲目
- 恋の遺恨の恐ろしさ
- 短気は損気の丸橋忠弥
- 思案のすえの一策
- 忠弥、正雪のお供と間違えられる
- 山師の面を引んむかん
- 喧嘩も早いが惚れるのも早い
- 不思議な大道芸人
- 着物はぼろでも心は錦
- うむ、さすがは大山師の隊長
- 天を相手の大賭博
- 大酒飲みの破戒坊主
- 胡麻の蠅の頭をポカリ
- 五戒を誤解しているぞ
- 白石噺、宮城野・信夫
- 健気なり姉妹の悲願
- 晴れて報いる父の仇
- 飛鳥山の夜桜
- 不意打ちの槍に五言絶句
- 打ちあける心の秘密
- 血判に誓う七十五名
- 茶の湯に托してかける謎
- 軍用金を生みだす秘策
- 奇想天外、火定の法
- 集まる金は十五万両
- 知恵伊豆、不審をいたく
- 時いたる将軍の死去
- 千丈の堤も蟻の一穴から
- 大事の前の小事とは
- 万事休す、陰謀露見
- 忠弥を囲む三百人の捕り手
- 捕り手を前に楽しむ茶道
- 天なり命なりと柴田三郎兵衛
- 抜け穴道をたどって離散
- 九十九事なって百事に満たず
- 従容たり正雪の最期
- 痛むべし同志の末路
成立と背景
「慶安太平記」の一部として語られ、大岡政談の天一坊事件と並ぶ大事件として紹介されている。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
講談は演者によって筋や読み方の細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『講談名作文庫(真田幸村・水戸黄門・大岡政談・柳生旅日記・赤穂義士銘々伝・太閤記・鼠小僧次郎吉・いれずみ奉行・弥次喜多道中記・寛永三馬術・清水次郎長・塚原卜伝・大久保彦左衛門・雷電為右衛門・左甚五郎・幡随院長兵衛・田宮坊太郎・国定忠治・一休和尚漫遊記・伊達騒動・天保六花撰・快傑自来也・由井正雪・荒木又右衛門)』講談社 編、講談社、1976年(電子版 2013〜2014年)
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

