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天保水滸伝てんぽうすいこでん
下総を舞台に、博徒の親分・笹川繁蔵と飯岡助五郎の対立が深まり、用心棒平手造酒の死を経て抗争が続いていく、実在の事件に基づく連続物。
連続物(何席にもわたって続く長い話)。系統は侠客物(人入れ稼業・元締めの話。)
あらすじ
下総国を舞台に、笹川繁蔵と飯岡助五郎という二人の博徒の親分が血で血を洗う抗争を繰り返していく。幼少より怪力で知られた繁蔵は、江戸に出て相撲取りとなるが横綱との悶着から一年で角界を去り、故郷へ戻って博徒の道に入る。
繁蔵はたちまち頭角を現し、旅籠「十一屋」を本拠地に笹川一家を興す。一方、博徒と十手持ちを兼ねる助五郎は下総一帯に勢力を張っており、新興勢力の繁蔵とことごとく対立し、二人は生涯の宿敵となっていく。
各席
7席手元の本に題と筋が載っている席だけを並べています。席の分けかたと題は演者によって変わります。
- 1. 相撲の啖呵下総で醸造業を営む問屋の息子として生まれた繁蔵は、幼いころから相撲に夢中だった。江戸に上って千賀ノ浦部屋に弟子入りするものの、七代目横綱の稲妻雷五郎とのいざこざから啖呵を切って角界を飛び出し、地元に戻ってかつての相撲仲間を率いて一家を構える。
- 2. 平手の破門〜鹿島の棒祭り江戸の千葉道場を酒でしくじり、繁蔵の客人となった平手造酒は、酒を断つと誓ったうえで鹿島神宮へ足を運ぶ。祭礼でついに禁を破って居酒屋で酒を飲んだところへ、助五郎の子分三人が現れる。
- 3. ポロ忠売り出し塩釜神社の祭りで開かれる賭場に、一人のみすぼらしいやくざが乗り込んでくる。ぼろを着ていることから「ポロ忠」と渾名される下っ端の忠吉で、親分の勘吉から着物と帯、二百両の軍資金をかすめ取ってきたのだった。大物の信夫常吉を後ろ盾と称して大勝負に臨んだ忠吉は、見事に勝利をつかみ取り、一躍名を上げる。
- 4. 笹川の花会洲崎の政吉が助五郎の名代として繁蔵の花会に持参した祝儀は、わずか五両にすぎなかった。ほかの親分たちからは軒並み大金の祝儀が届いており、その差に青くなる政吉だったが、場を仕切る繁蔵が機転を利かせ、助五郎からの祝儀を五十両ということにして披露してみせる。
- 5. 潮来の遊び堅物で通っていた質屋の息子・留次郎は、同じ商売の若旦那たちに連れられ、潮来宿の遊廓で遊びを覚える。そこで助五郎の子分もぐらの新助と女を争い、絡まれたところを笹川一家の勢力富五郎に救われる。
- 6. 平手造酒の最期体を壊し尼寺に身を寄せて養生していた平手造酒の耳に、利根川の河原で笹川方と飯岡方がぶつかり合うという知らせが届く。止める尼僧たちを振り切って繁蔵側に加勢しに走った造酒だったが、乱闘のさなかに血を吐き、そのまま息絶えてしまう。
- 7. 三浦屋孫次郎の義侠助五郎は配下の甚蔵と三浦屋孫次郎に命じ、不意打ちで繁蔵の命を狙わせる。繁蔵から受けた恩義に板挟みとなった孫次郎をよそに、手を下したのは甚蔵だった。討ち取った繁蔵の首を粗末に扱う助五郎の態度に怒りを覚えた孫次郎は、義理の盃を突き返し、その首を自ら笹川方へと運ぶ。
この読み物に含まれる一席
1席それぞれ独立した演目として高座にかかります。本に「『天保水滸伝』の一席」と 書かれているものだけを並べています。
- 笹川の花会『天保水滸伝』の一席。
成立と背景
天保年間に下総国の大利根河原で実際に起きた博徒同士の抗争を題材とし、房総を巡業していた講釈師の宝井琴凌が連続講談に仕立てたとされる。
書名にある「水滸伝」の由来には諸説あり、繁蔵の仇討ちを誓った勢力富五郎が金毘羅山に立てこもり抵抗を続けたこと、また新興の笹川一家が幕府の後ろ盾がある飯岡一家を破ったことが、中国の『水滸伝』になぞらえられたともいわれる。
昭和初期に作家正岡容が浪曲化し、二代目玉川勝太郎が演じて広まった。1959年には三波春夫が「大利根無情」として歌にしている。
ほかの芸能でも演じられます
この演目は浪曲でも演じられています。同じ題材でも、 芸能によって筋の運びや読みどころが変わります。
- 浪曲「天保水滸伝」
下総の利根川流域で実際に起こった、笹川繁蔵一家と飯岡助五郎一家の抗争を描く侠客伝です。二代目玉川勝太郎の口演で知られます。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
講談は演者によって筋や読み方の細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『講談入門』神田松之丞/編・文 長井好弘/写真 橘蓮二、河出書房新社、2018年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

