小猿七之助こざるしちのすけ
文化文政の頃、一人の船頭に一人の芸者という禁を破って舟に乗ったお滝が、七之助と共に助けた男の死をきっかけに、実の親をかばう七之助と深い仲になっていく話。
一席物(一話で完結する話)。系統は白浪物(泥棒の話。)
あらすじ
舞台は文化文政の頃。一人の芸者が一人の船頭の舟に乗ることは、間違いのもとになるとして固く禁じられていた。男嫌いで知られる芸者のお滝は、その禁を承知のうえで、小猿と呼ばれる船頭七之助の舟に一人で乗り込む。
闇の中、大川を渡る途中、二人は永代橋のあたりで身投げする男を見つけて助ける。男は新川新堀の酒問屋鹿島屋に勤める幸吉と名乗り、預かり金と父から借りた金、合わせて四十両を舟中の博打で失ったのだと話す。同情したお滝は幸吉に三十両を渡す。幸吉は、自分を騙した相手の袖を引き裂いて持ち帰ったと明かし、その名を深川相川町の網打ち七蔵だと告げる。
ところが、その七蔵こそ七之助の実の父だった。隙を見て七之助は幸吉を川へ突き落とし、助けた相手を手にかけたことになる。これをお滝に見られては困ると、七之助は舟を止めて匕首を抜き、父を守るために幸吉を手にかけたのだと打ち明ける。すると、お滝は好いた男に手にかけられるなら本望だと答え、一人乗りの禁を知りながらこの舟を選んだのは、ただ二人だけでいたかったからだと告げて七之助に迫り、二人は結ばれる。
成立と背景
六代目神田伯龍からこの演目を教わった立川談志が、高座で演じていた。『青龍刀権次』と同じく、通しで演じられる長い物語の一部にあたる。
読んできた人
六代目神田伯龍、立川談志
読み方の違い
同じ演目でも、演者によって細部が変わります。分かっている違いを並べています。
- 立川談志の演出は、六代目神田伯龍のものと比べて、お滝が七之助を口説く場面の描写が多いとされる。
近い演目
同じ系統・主題のタグが重なる演目です。共通するタグを添えています。
- 青龍刀権次
背中の彫り物から青龍刀権次と呼ばれる男が、芸者殺しの侍を金で見逃した過去を抱え、幕末から明治にかけてその相手にゆすりを仕掛けては裏切られ、ついに盗賊となる話。
- 鼠小僧次郎吉
歌舞伎小屋の木戸番の子として生まれた次郎吉が、義憤をきっかけに博打の道へ入り、大名屋敷ばかりを狙う盗みを重ねて義賊と呼ばれ、捕らえられ処刑されるまでを描く。
- 天保六花撰
天保年間の江戸を舞台に、御家人上がりの河内山宗俊や片岡直次郎ら一癖ある6人の男女が、騙りと色恋を重ねながらそれぞれの最期を迎えていく。
- お富与三郎
鼈甲問屋の若旦那与三郎は、木更津でやくざの妻お富と恋仲になり折檻されるが、3年後に江戸で再会し、転落した人生を共に歩む。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
講談は演者によって筋や読み方の細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『講談入門』神田松之丞/編・文 長井好弘/写真 橘蓮二、河出書房新社、2018年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

