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いれずみ奉行いれずみぶぎょう
旗本の家に生まれた遠山金四郎が、病弱な弟に家督を譲るため出奔して町人として暮らしたのち、町奉行として数々の事件を裁き、桜の刺青から刺青奉行と呼ばれた一代記。
連続物(何席にもわたって続く長い話)。系統はお裁き物(奉行の裁きを読む。政談ともいう。)
あらすじ
遠山家の嫡男金四郎は側室の子で、生来聡明であったが、2歳下に正室の子金之丞が生まれ、こちらは病弱で万事に鈍かった。父河内守が金四郎に家督を継がせようとするのを見た金四郎は、義母への義理から自ら身を引くことを決意し、用人小堀左内の勧めで、三ノ輪の炭屋太吉のもとに身を寄せ、武士の身分を捨てて居候となった。
炭屋の手伝いをしながら暮らす金四郎は、遊女屋への炭の配達をきっかけに、遊女白玉やお島と知り合い、絡んできた地回りの藤五郎や清吉を武術で退ける。吉原で屋根の上で暴れる酔った侍たちを取り押さえるなど、腕っぷしと機転で数々の騒動を収めた。ある夜には、大名屋敷に忍び込んで金品を盗んだ鼠小僧次郎吉に手裏剣代わりの小柄を投げつけて手傷を負わせたが、取り逃がしている。
後年、勘定奉行や町奉行を務めるようになった金四郎は、大塩平八郎や近藤重蔵と、外国との交わりや武備のあり方について論じ合った。工事現場の風紀の乱れを調べる際には、自ら大道芸人に扮して役人たちの前で語りを演じ、遊興にふける渋川六蔵ら役人の姿を暴いた。天保の改革にあたっては、浅草観音裏手への芝居町移転を提案するなど、鳥居甲斐守との議論でも一歩も引かなかった。
晩年に扱った事件として、10年前に父を殺された寅吉・政吉兄弟の一件が語られる。父を殺した宅次は、狐を使う行者と組んで人をだます男であったとわかり、金四郎は兄弟の討った行いを敵討ちと認めて許し、褒美を与えたうえで宅次の弔いを命じた。金四郎は嘉永5年に役を退き、安政2年2月29日、53歳で世を去った。
本の章立て
49章『講談名作文庫』(講談社)の本文に出てくる見出しを、本の並びのまま挙げています。この巻の章は、話の中の場面を指しています。筋はここには書いていません。印の付いたものは、文字の読み取りに確信が持てなかった題です。
- 両刀捨てて炭屋の居候
- お島、白玉、恋の鞘当て
- いや、面目次第もござらぬ
- 男禁制の看板の塗りかえ
- 廓の用心棒、屋上の大格闘
- 遠山桜に上り竜下り竜の刺青
- 泊まったらお島に叱られる
- 父左衛門尉はらはらと落涙
- あなたはわたしを手籠めにでも
- 囃子方金ちゃんの止め男
- 吉原組は黙って帰ってくれ
- ちと奢りがすぎやしねえか
- ご生母は亡くなられましたぞ
- イミテーションの団十郎
- お島いとしゃ涙の死に別れ
- 慕いよる二八の女軽業師
- 小普請入り近藤重蔵の屋敷
- 早くも見ぬいた両雄の心底
- お声がかりで跡目相続
- くつろいだ親子の再会の儀
- 今宵を名残の廓大尽
- 廓の暇乞いに白玉を身請け
- それつ!怪しきやつが
- 七日の内に盗んでみぬか
- こりやっ鼠小僧来たかっ
- だいぶ酒が過ぎたようだのう
- 台湾島流浪者の取り調べ
- 地獄へ金を持っていく気か
- とんだところへ現れた侍
- 高野長英もさじを投げた
- この頭巾に覚えござらぬか
- これでも剣術指南か
- 蘭学者といえば目のかたき
- 吹上の御前裁きに初登場
- さすがその道の通人ふり
- 今も昔も変わらぬ役人根性
- あの手この手で奢侈禁止
- 奢りの海老蔵にきつい咎め
- 金食い印旛沼の埋め立て工事
- 乗り込む密偵、左衛門尉
- 一げえに男がほしくなった
- 無理押し、苦肉の金策評定
- 天保銭吹き直しが運の尽き
- 酔いどれの口から泥を吐く
- 悪玉茂平次たまし討ち
- 狐を使って恋の遺恨晴らし
- 兄弟はしめて父の仇を知る
- 胴輪斬り、仇討ち本懐
- 罪を憎み人を憎むな弔えよ
成立と背景
大岡越前守・依田豊前守・曲淵甲斐守・根岸肥前守とともに、江戸時代を通じて数えられる町奉行の一人として紹介されている。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
講談は演者によって筋や読み方の細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『講談名作文庫(真田幸村・水戸黄門・大岡政談・柳生旅日記・赤穂義士銘々伝・太閤記・鼠小僧次郎吉・いれずみ奉行・弥次喜多道中記・寛永三馬術・清水次郎長・塚原卜伝・大久保彦左衛門・雷電為右衛門・左甚五郎・幡随院長兵衛・田宮坊太郎・国定忠治・一休和尚漫遊記・伊達騒動・天保六花撰・快傑自来也・由井正雪・荒木又右衛門)』講談社 編、講談社、1976年(電子版 2013〜2014年)
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

