うどん屋うどんや
別題: 風邪うどん(上方)
冬の夜、鍋焼きうどんの屋台を呼び止めた酔っ払いに付き合わされたうどん屋が、そのあとにも当てを外します。
あらすじ
冬の夜、鍋焼きうどんを担いで流しているうどん屋を、酔った男が呼び止めます。男は火にあたらせろ、水を一杯くれと言うだけで、うどんは注文しません。うどん屋は後で買ってもらえると思って相手をします。
男はその日出てきた仕立屋太兵衛の娘の婚礼の話を始め、「仕立屋の太兵衛を知ってるか」と何度も尋ねます。娘が唐紙の奥から出てきて手をついて挨拶した場面を繰り返すので、うどん屋は先を言えるほど覚えてしまいます。男は火の粉を注意したり言いがかりをつけたりしながら話し続け、やがて立ち去ります。
うどん屋はそのあと、別のところで赤ん坊が寝たばかりだから静かにしてくれと苦情を言われます。大通りに出ると、大きな店の陰から小さな声で呼ばれます。うどん屋は、店の奉公人が主人に隠れて食べるつもりで、大勢に売れると考えます。注文は一つだけでしたが、声を落としたまま熱いうどんを出します。客は食べ終えて代金を払い、去り際にもう一度小さな声で呼びかけます。
うどん屋が期待して小声で応じると、客は「おまえさんも風邪ひいてるのかい」と尋ねます。声が小さかったのは客が風邪で声が出なかっただけで、うどん屋の当ては外れていました。
成立と背景
柳家小さんの代表的な噺の一つで、三代目小さんが大阪の「風邪うどん」を東京に移しました。
客に商売の口上をからかわれる噺には「蜘蛛駕籠」「豆屋」「提灯屋」があります。この噺のうどん屋を、「代り目」で酒の燗をさせられるうどん屋と同じ人物と見る向きもあります。
筋の展開で運ぶ噺ではなく、ある夜のうどん屋の一部始終を見せる噺です。
演じてきた人
五代目柳家小さんの口演が手本とされ、期待が表情や眼つきに出るところが挙げられます。
本によって違うところ
落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。
- 酔った客がうどんを食べるかどうか。『落語名作200席 上』『落語百選 冬』は食べずに帰り、『古典落語(続々)』は断ったあとで結局注文して食べ、薬味をかけすぎてむせます。
- 『落語百選 冬』『古典落語(続々)』には、うどん屋が代わりに雑煮をすすめて断られる場面があります。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『落語名作200席 上(角川ソフィア文庫)』京須偕充、KADOKAWA、2014年
- 『落語百選 冬(ちくま文庫)』麻生芳伸 編、筑摩書房、2004年
- 『古典落語(続々)』興津要 編、講談社、1973年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

