夏どろなつどろ
別題: 置きどろ
夏の夜、忍び込んだ泥棒が、逆に居直った男に金を出させられて帰ります。
あらすじ
夏の夜、戸が開いたままの長屋に泥棒が忍び込みます。中にいたのは職人の男で、気づかれて金を出せと脅されても平然としており、逆に自分を殺してくれと頼みます。
死にたがる理由は、大工道具の箱を質に入れてしまい、請け出す金がないので仕事に出られず、一文もないことでした。泥棒は気の毒に思い、道具箱を請け出す金を渡します。
男はさらに、着物も質に入れて裸同然だ、家賃も何か月も溜まっていると言って、次々に追加を求めます。泥棒は結局、持ち金を全部渡して一文なしになり、帰ろうとします。
帰ろうとする泥棒を男が呼び止め、また来てくれと頼みます。盗みに入られた側が、盗人に次を約束させる形で終わります。
成立と背景
泥棒の出てくる噺を寄席の初日に好んで演じるのは、「客のふところを取り込む」に通じて縁起がよいとされるためです。
季節感を抜いたほぼ同じ噺に、四代目三遊亭圓遊が演じた「置きどろ」があり、三遊亭小遊三に受け継がれています。
演じてきた人
三代目三遊亭小圓朝は泥棒と大工のやりとりで評価され、五代目柳家小さんの口演も知られます。
本によって違うところ
落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。
- サゲの言い方。『落語名作200席 下』は「陽気の変わり目にまた来てくんねえ」、『はじめて読む 古典落語百選』は「季節の変わり目にまた来てくんねえ」で、『古典落語(続々)』は「あとの家賃は、こんどいつ持ってきてくれる」と、残りの家賃を催促する形になります。
- 金額。『落語名作200席 下』は最初に五円、合計十一円ほど。『古典落語(続々)』は道具箱の元金三円と利息二円、着物代、食費、家賃二口ぶんと段階を追って渡します。『はじめて読む 古典落語百選』は金額を書かず、蚊いぶしの火を消して家を火事から救った「命の親」だからという理由を挙げています。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『落語名作200席 下(角川ソフィア文庫)』京須偕充、KADOKAWA、2014年
- 『古典落語(続々)』興津要 編、講談社、1973年
- 『はじめて読む 古典落語百選』林家たい平、リベラル社、2021年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

