浪曲の演目

安中草三郎あんなかそうざぶろう

世話物人情噺が原作安中草三郎恒川半三郎江戸上州義理と人情親孝行盗賊大根の味噌漬け続き物

三遊亭圓朝の人情噺が原作の続き物です。親のための盗みから始まり、罪を重ねていく草三郎の一生を描きます。

続き物(何席にも分かれて語られる長い話)。系統は世話物

あらすじ

草三郎の父・香散見草七はもと柳生流の剣客でしたが、いまは病の床にあります。幼い草三郎は茶店で饅頭を売って暮らしを立てていました。あるとき、茶店に居合わせた武士・恒川半三郎の荷物が大根の味噌漬けだと知り、これがあれば粥も満足に食べられない父も食べられるだろうと考えて盗みます。折檻しようとする父を半三郎が止め、それが縁となって、草三郎は家の再興を願う父の意志を継いで半三郎の家臣になります。

半三郎も柳生流の剣客で、草三郎は剣を仕込まれます。しかし恒川家は十石二人扶持の軽輩で、八百石の久保田伝之進に遺恨を持たれた半三郎は久保田を斬って出奔します。草三郎は主人の身代わりに自分が斬ったと名乗り出て牢に入り、破獄して白蔵とともに江戸で盗賊になります。白蔵は捕らえられて処刑され、草三郎は上州安中へ逃れて饅頭屋を営みます。

半三郎は妻を旅先で亡くし、乳飲み子の娘を捨てます。娘は取手屋久兵衛に拾われますが、取手屋が没落して吉原に身を売ります。草三郎は娘を助けたい半三郎のために三百両を盗んで渡しますが、その金は盗まれてしまいます。草三郎は取締の手を逃れ、伊香保の福田屋竜造のもとで榛名の梅吉と名を変えて暮らします。のちに半三郎は娘を身請けしますが、娘の恋人が自分の斬った久保田伝之進の息子だとわかり切腹します。娘は恋人と結ばれて久保田の家を再興し、草三郎は思い残すことはないとして捕らえられ、処刑されます。

主な一席

3

このほか、題名だけが挙げられている一席: 「初手の悪事が親のため」、「二度と三度と重なる悪事がお主のため」、「千住の捕物」

成立と背景

原作は三遊亭圓朝作の人情噺です。文化・文政の頃に上州安中に実在した饅頭屋・草三郎をモデルにしており、圓朝は上州の侠客・福田屋竜造から話を聞いて書いたとされます。浪花節や祭文で早くから口演されていました。

三代目鼈甲斎虎丸のレコードは、長い物語のうち「千住の捕物」の一場面だけで完結しています。圓朝の人情噺や初代・二代の浪花節が連続物だったのに対し、レコードは収録時間の制約から聴かせどころの一場面だけで成立させる形になりました。

演じてきた人

初代鼈甲斎虎丸は明治19年(1886年)頃に上京し、関東で敬遠されがちだった関西節を定着させた演者とされ、この演目を得意としました。三代目鼈甲斎虎丸は大正期にレコード「安中草三郎」で広く知られ、東家楽燕・鼈甲斎重友と並んで三羽烏と呼ばれましたが、昭和13年(1938年)5月5日に54歳で亡くなりました。

この演目を調べる・聴く

浪曲は演者によって筋や節の細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。

出典

  1. 浪曲論[増補改訂版]稲田和浩彩流社2022年

上の本に書かれている事実をもとに、文章は書き起こしたものです。本の文章は転載していません。

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