落語の演目

厩火事うまやかじ

滑稽噺夫婦女房ご隠居江戸論語が下敷き

亭主の本心を確かめるため、大事にしている瀬戸物をわざと割ってみる女房の噺です。

あらすじ

女髪結いのお崎が、夫婦喧嘩のたびにそうしているように、仲人である旦那のもとへ駆け込んできます。亭主は働かず、一日中家で酒を飲んで暮らしています。その日お崎は仕事で帰りが遅くなり、帰宅すると亭主に不機嫌な顔をされました。愛想を尽かしたお崎は、別れたいと訴えます。

旦那はいったん別れなさいと言うものの、外から夫婦のことは判断できないと思い直し、二つの話をします。ひとつは孔子の故事。留守中に厩が火事になり愛馬を失いましたが、帰ってきた孔子は家臣の無事だけを尋ね、馬のことは口にしませんでした。もうひとつは麹町のある屋敷の話。瀬戸物道楽の主人は、家宝の皿を持った奥方が階段から落ちたとき、皿の無事ばかりを気にして奥方の身を案じる一言を言わず、離縁されました。

旦那は、家に帰って亭主に詫びたうえで、亭主が大事にしている瀬戸物をわざと壊し、本心を試してみるよう勧めます。お崎は言われたとおりに瀬戸物を割ります。亭主は瀬戸物には触れず、お崎に怪我はないかと繰り返し尋ね、瀬戸物は金で買えるからかまわないと言います。

感激したお崎が「そんなにあたしが大事かい」と尋ねると、亭主は、お崎にもしものことがあったら明日から遊んで酒が飲めなくなる、と答えます。

成立と背景

『論語』の「厩焚けたり、子朝より退き、人を傷えるかとのみ言いて馬を問わず」の一節が下敷きになっています。

もとは三代目柳家小さんの持ちネタで、お崎と亭主が夫婦になった馴れ初めまで入る四十分以上の長編でした。八代目桂文楽が枝葉を取り払い、お崎の心情に焦点を絞って今の形にしました。

演じてきた人

八代目桂文楽はお崎の人物像をつくった演者で、仲人の旦那を終始お崎より上に置き、知恵を授けるように演じました。五代目古今亭志ん生は二人の目線を同じ高さに置いた庶民的な演じ方をし、十代目柳家小三治は文楽の型をもとにしながら目線の高さは志ん生と同じにしています。

本によって違うところ

落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。

この演目を調べる・聴く

落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。

出典

  1. 落語名作200席 上(角川ソフィア文庫)京須偕充KADOKAWA2014年
  2. 落語百選 秋(ちくま文庫)麻生芳伸 編筑摩書房2004年

上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

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