真田小僧さなだこぞう
別題: 六文銭(上方)
小遣いをせびる息子が、母のところへ来た男の話を小出しにして父から金を引き出します。
あらすじ
休みの日にのんびりしたい職人の父親に、一人息子がまとわりついて小遣いをねだります。断られると、父の留守中に来たよその男のことを母親に話すと言い出したので、父は聞き捨てならないと問いただします。
息子は寄席の木戸銭のように、先に銭をくれれば話すと言い、金を受け取るごとに少しずつ小出しにします。ステッキをついて色眼鏡をかけた男が来て母が家に入れた、外から戻って障子の穴から覗くと布団の上に母とその男がいた、というところまで話して、さらに金をせしめます。
父が相手は誰だと問い詰めると、正体は横町の按摩が揉み療治をしていただけでした。買い物から帰った母親は、亭主がだまされたことを笑い、子どもの知恵を褒めます。
父は、子どもの知恵はそういうものではいけないと言って、講釈で覚えた『真田三代記』の話を女房に語ります。真田昌幸が北条方に囲まれたとき、子の与三郎(のちの真田幸村)が敵将の旗印である永楽通宝を掲げて夜討ちをかけ、北条方が味方の裏切りと誤って同士討ちを始めた隙に上田へ帰った、その旗印が六本あったことから真田家の紋が六連銭になった、という話です。
戸袋の陰で聞いていた息子を父が呼び入れ、さっきの銭を返せと言います。息子は講釈を聞いてきて使ったと言い、父が何度も聞いてやっと覚えた話を、一度の立ち聞きでそっくり暗唱してみせます。さらに六連銭の紋の並べ方をしつこく尋ね、父が穴あき銭を六枚並べて実演すると、自分もやってみると言いながら、その銭を持って逃げてしまいます。
父が「また講釈を聞くのか」と尋ねると、息子は「今度は焼き芋を買うんだ」と答えます。父が「ああ、うちの真田も薩摩へ落ちた」と言って終わります。
成立と背景
上方ではこの噺を「六文銭」と呼びます。大人より利口な子どもが主人公になる噺の代表的なものとされます。
大坂落城や真田幸村の逸話は若い世代には縁遠くなり、演じにくくなっていくとされます。原話や成立の年は分かっていません。
今日では前半を省いて、前座も手がける噺になっています。
演じてきた人
六代目三遊亭圓生は初代柳家小せんから直伝を受け、三代目三遊亭金馬にも圓生から伝わりました。この二人の口演が戦後の双璧とされます。子どもの声色で笑いを取る金馬のほうが人気がありました。三代目古今亭志ん朝は、金馬と圓生を合わせた口演とされます。
本によって違うところ
落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。
- 息子が父からせしめた金額。『落語名作200席 上』は十銭ずつ三回で三十銭、『古典落語(選)』は一銭・二銭・三銭と増やして六銭です。
- 紋の実演に使う銭。『落語名作200席 上』は穴あきの五十銭玉六枚、『古典落語(選)』は五銭玉六枚です。
- 六連銭の読み方。『落語名作200席 上』は、六代目圓生が「リクレンセン」、三代目金馬が「ロクレンセン」と読んでいたとし、リクのほうが多数派だとしています。
- 『古典落語(選)』には、父が幸村の十四歳と自分の息子の十二歳を並べて言う場面があります。『落語名作200席 上』は息子の年齢を書いていません。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『落語名作200席 上(角川ソフィア文庫)』京須偕充、KADOKAWA、2014年
- 『古典落語(選)』興津要 編、講談社、2015年
- 『古典落語(続)』興津要 編、講談社、1972年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

