中村仲蔵なかむらなかぞう
端役しか与えられなかった歌舞伎役者が、工夫を凝らした演技で評判を呼ぶまでを描いた芝居噺。
あらすじ
苦労のすえに出世した歌舞伎役者は、大芝居でもらった役が、客がほとんど見ていない時間帯に演じられる端役ただ一つだった。腹を立てるが、妻の勧めで、これまでにない演じ方を工夫しようと心に決め、日を決めて願掛けに通う。
願掛けの最終日、参詣からの帰り道に雨に降られ、雨宿りに立ち寄ったそば屋で、着流しに大小の刀を差し、破れた蛇の目傘を半開きにした浪人風のいい男を見かける。役者はその姿に着想を得て、初日の舞台の花道でその格好をそのまま再現し、傘を開いて見得を切りながら登場する。
観客はその姿にすっかり息をのみ、続く立ち回りの場面でも静まり返ったまま声ひとつあげない。役者はこの静けさをすっかり失敗のしるしだと思い込み、これでは江戸にいられないと妻に告げて、上方へ落ちのびる支度をはじめてしまう。
そこへ師匠からの使いが訪れ、会いに行くと、ふだん厳しい師匠から工夫を褒められ、大切にしていた煙草入れを譲り受ける。喜んで妻にその話をして手を合わせると、からかわれて二人のやり取りは軽妙な言葉遊びで締めくくられる。
「煙に巻かれる?もらったのが煙草入れだ」という言葉遊びで締めくくられる。
ほかの芸能でも演じられます
この演目は講談でも演じられています。同じ題材でも、 芸能によって筋の運びや読みどころが変わります。
- 講談「中村仲蔵」
家柄も後ろ盾もない下回り役者中村仲蔵が、『忠臣蔵』五段目の斧定九郎役に工夫を凝らし、雨宿りで見た貧しい旗本の姿からヒントを得て新しい演出に挑む話。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『古典・新作 落語事典』瀧口雅仁、丸善出版、2016年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

