落語の演目

千早振るちはやふる

滑稽噺知ったかぶりご隠居吉原江戸

百人一首の歌の意味を聞かれたご隠居が、力士と花魁の話にこじつけて説明します。

あらすじ

娘に「千早振る神代も聞かず龍田川 から紅に水くくるとは」の意味を尋ねられた父親が、答えられずにご隠居のところへ教わりに行きます。ご隠居は「龍田川」を川の名ではなく相撲取りの四股名だとして、でまかせを語り始めます。

力士の龍田川は精進の末に大関まで出世し、吉原で花魁の千早太夫に一目惚れします。しかし「わちきは相撲取りはいやでありんす」と断られ、妹分の神代太夫にも同じく断られます。龍田川は力士をやめ、実家の豆腐屋を継ぎます。

ある秋の夕方、みすぼらしい女乞食が豆腐屋の店先に現れ、卯の花を恵んでほしいと頼みます。それが落ちぶれた千早でした。龍田川は相手に気づいて怒り、卯の花を与えず突き飛ばします。千早は井戸に身を投げます。

ご隠居は、この話に歌の各句を無理やり当てはめて説明します。千早が振ったから「千早振る」、神代も断ったから「神代も聞かず」、龍田川がくれなかったから「から紅に」、井戸に飛び込んだから「水くくる」というわけです。

最後に残った「とは」の意味を問い詰められたご隠居が、「とわ」は千早の本名だったと苦し紛れに答えます。

成立と背景

原話は山東京伝の滑稽本『百人一首和歌始衣抄』(天明7年・1787年)とされ、「やかん」などと同じく、無学な者の半可通ぶりを描く系統の噺です。もとは別の歌の珍解釈も入っていましたが、今は演じられません。

元の歌の本来の意味は、次のとおりです。「千早振る」は「神」にかかる枕詞、「神代も聞かず」は神の代にも聞いたことがないの意、「竜田川」は奈良県生駒郡を流れる川、「水くくる」は水をくぐるではなく、くくり染めのことです。

演じてきた人

戦後随一の高座として五代目柳家小さんが挙げられます。十代目柳家小三治は、小さんの基本を踏まえながら笑いの角度をより尖らせているとされます。

本によって違うところ

落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。

この演目を調べる・聴く

落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。

出典

  1. 落語名作200席 下(角川ソフィア文庫)京須偕充KADOKAWA2014年
  2. 落語百選 冬(ちくま文庫)麻生芳伸 編筑摩書房2004年
  3. 古典落語(上)興津要 編講談社1972年

上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

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