化物使いばけものつかい
別題: 化け物屋敷
人使いの荒い隠居が化け物の出る家に住み、現れた化け物にも次々と用事を言いつけます。
あらすじ
本所に住む隠居は人使いが荒く、奉公人が三日と続きません。そこへ田舎出の朴訥な男が口入れ屋の紹介で雇われます。周りは続かないと止めましたが、本人は強情に決めます。
初日から隠居は、薪割り、炭を手ごろに切って炭箱へ一本ずつ入れること、縁の下や天井裏の掃除、どぶ掃除、向こう三軒両隣の掃除、使いと、次々に用事を言いつけます。男はこれに三年辛抱して勤めます。
あるとき隠居が、化け物が出るという噂のある家を、相場より安いという理由で買って引っ越すことになります。男は化け物を恐れて暇を願い出ますが、引っ越しの手伝いまで済ませてから出ていきます。隠居はひとりでその家に住み始めます。
最初の晩、寒気とともにひとつ目小僧が現れます。隠居は少しも恐れず、茶碗洗い・布団敷き・肩もみと用事を言いつけて働かせ、給金もいらず飯も食わない働き手だと気に入ります。二晩目には大入道が現れ、庭の石灯籠の頭を直すことや、背が高いので梯子なしでできる屋根の草むしりを言いつけられます。別の晩には女の化け物が現れ、袖口の繕いや襟の付け替え、足袋の洗濯といった針仕事をさせられます。
さらに別の晩、大きな狸が現れます。狸は涙ぐみながら「こう化物使いが荒くては、とても辛抱がなりかねます」と、かつての奉公人と同じ文句で暇を願い出ます。
成立と背景
この噺は大正時代に作られたもので、新作のなかの古典という位置づけです。別名を「化け物屋敷」といいます。口うるさい隠居のやりとりから、人間のような化け物が出てくることで場面が変わります。
狸が暇を願い出る一言が、この噺の代表的な文句とされます。
化け物まで人のように使い倒すおもしろさの一方で、弱い者や癖を笑いの種にすることの危うさも指摘されます。
演じてきた人
六代目三遊亭圓生と八代目春風亭柳枝がラジオで演じ、三代目桂三木助も手がけました。三代目古今亭志ん朝は、女の化け物を「のっぺらぼうの美女」として演じ、「なまじ目鼻があるので苦労している女はいくらもある」という文句を作りました。
本によって違うところ
落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。
- 奉公人の名。『落語名作200席 下』は杢助、『古典落語(続々)』は杢兵衛です。
- 使いの行き先。『落語名作200席 下』は品川のついでに千住、『古典落語(続々)』は品川のついでに浅草です。
- 隠居の素性。『落語名作200席 下』は本所割下水に住む元御家人の吉田老人としています。『古典落語(続々)』は名前を出さず、本所の隠居としています。
- 『古典落語(続々)』には、暇をもらうときに奉公人が、無駄の多い用事の言いつけ方(豆腐・がんもどき・油揚げを一品ずつ買いに行かせる、着物を三か所で順に脱ぐなど)を挙げて隠居に忠告するくだりがあります。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『落語名作200席 下(角川ソフィア文庫)』京須偕充、KADOKAWA、2014年
- 『古典落語(続々)』興津要 編、講談社、1973年
- 『古典落語(選)』興津要 編、講談社、2015年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

