青菜あおな
屋敷で見た夫婦の洒落たやりとりを、植木屋が自分の長屋で真似してみます。
あらすじ
暑い日、庭仕事をしていた植木屋が屋敷の旦那に声をかけられ、涼み台へ招かれて冷用酒の柳影と、氷を敷いた鯉のあらいをふるまわれます。
旦那が菜をお上がりかと尋ね、植木屋が好物だと答えると、旦那は手を叩いて奥様を呼びます。奥様は三つ指をついて「鞍馬より牛若丸が出まして、その名を九郎判官」と告げ、旦那は「義経にしておきなさい」と応じます。客に出す青菜がもう無いことを、客に悟られないよう夫婦で言い換える洒落でした。
感心した植木屋は、自分の長屋でも同じことをやりたくなり、友人を招きます。安酒を柳影、鰯の塩焼きを鯉のあらいと称してふるまいます。長屋には次の間がないので女房を押し入れに押し込み、屋敷を真似て手を叩いて呼びます。女房は暑さで汗だくになって押し入れから飛び出してきます。
女房は「鞍馬より牛若丸が出まして、その名を九郎判官義経」と、区切らずに最後まで言ってしまい、洒落が成り立ちません。
義経まで言われてしまった植木屋が、苦し紛れに「じゃあ、弁慶にしておけ」と言ってごまかします。
成立と背景
もとは上方の噺で、青菜という呼び方や柳影という酒の名にも上方の匂いが残っています。東京の落語として定着するときには、柳影を関東風に「直し」と呼び替える必要がありました。青菜という言葉自体は、本文中では使われません。
サゲの「弁慶」は、上方の古い言い方で振舞いにあずかることを指す言葉に由来し、義経の側近の弁慶を旦那の取り巻きにたとえたもので、単なる語呂合わせだけではないとされています。
人の言動を真似してまぜっ返す同じ型の噺に「猫久」があります。この噺の植木屋夫婦は、「猫久」の夫婦より年功を感じさせる人物として演じられます。
演じてきた人
東京では五代目柳家小さんの口演が代表的とされ、六代目春風亭柳橋の旦那ぶりも知られます。五代目小さんの高座では、植木屋が氷を口に含む場面が知られます。
本によって違うところ
落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。
- 『落語百選 夏』には、旦那が植木屋に「よしとけ」を洒落て「義経にしておけ」と言ったのだと種明かしをして聞かせる場面と、招かれた友人が菜を嫌がって渋る場面があります。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『落語名作200席 上(角川ソフィア文庫)』京須偕充、KADOKAWA、2014年
- 『落語百選 夏(ちくま文庫)』麻生芳伸 編、筑摩書房、2004年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

