佐倉義民伝さくらぎみんでん
実録物義太夫が原作佐倉宗五郎下総江戸実在の人物が題材親子百姓の直訴印旛沼続き物
下総佐倉の名主・佐倉宗五郎が、村々を代表して将軍へ直訴する物語です。「甚兵衛渡し」「妻子別れ」が名場面とされます。
続き物(何席にも分かれて語られる長い話)。系統は実録物。
あらすじ
佐倉宗五郎(惣五郎、宗吾郎)は下総印旛郡公津村・岩橋村二ケ村の名主で、389か村の百姓を代表して将軍家へ直訴する決意をします。将軍直訴は重罪で、連座を避けるために妻子に離縁状を渡します。
主な一席
2席甚兵衛渡し
船頭の甚兵衛が禁を破って、宗吾郎を印旛沼の対岸へ渡す一席です。
妻子別れ
直訴による連座を避けるため、宗吾郎が妻子に離縁状を渡して村へ戻す一席です。
成立と背景
元になっているのは義太夫です。浪曲では古くから演じられ、桃中軒雲右衛門も持ちネタにしていました。京山小円も演じています。四代目天中軒雲月の版は、浪曲作家・中川明徳の脚色によるものです。
中川明徳は、京山小円・雲右衛門・雲月のいずれの「佐倉義民伝」も「甚兵衛渡し」「妻子別れ」が中心で、農民運動としての側面を取り上げたものではないと述べています。「妻子別れ」は世話物で、命を懸けて直訴する宗吾郎と、それを助ける甚兵衛の側から描かれます。
浪曲ではありませんが、箏曲家の平井澄子が昭和40年(1965年)に「甚兵衛渡し」という語り物を作曲・口演しています(作詞・タカクラテル)。宗吾郎が農民に一揆を促す内容を含み、『浪曲論』の著者は浪曲ではこれはできないと述べています。
演じてきた人
桃中軒雲右衛門、京山小円、四代目天中軒雲月。五代目天中軒雲月、春日亭清吉も十八番としています。国本武春も掛けることがありました。
ほかの芸能でも演じられます
この演目は講談でも演じられています。同じ題材でも、 芸能によって筋の運びや読みどころが変わります。
- 講談「佐倉義民伝」
下総佐倉の名主・木内宗五郎が、重い年貢に苦しむ領民のため将軍家へ直訴し、一家もろとも刑死する連続物。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
- 文化デジタルライブラリー(この演目の公演記録)
国立劇場・国立演芸場などでの上演記録です。いつ・どこで・誰が演じたかが分かります。
浪曲は演者によって筋や節の細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 浪曲論[増補改訂版]/稲田和浩(彩流社・2022年)
上の本に書かれている事実をもとに、文章は書き起こしたものです。本の文章は転載していません。

