慶安太平記けいあんたいへいき
実録物丸橋忠弥善達由井正雪江戸駿河東海道実在の人物が題材幕府への謀反護摩の灰続き物道中付け
由井正雪・丸橋忠弥らによる慶安事件を扱う続き物です。浪曲では、僧・善達が東海道で護摩の灰と出会う「怪僧善達」がよく演じられます。
続き物(何席にも分かれて語られる長い話)。系統は実録物。
あらすじ
徳川幕府の政策を批判し、増え続ける浪人の救済を掲げて幕府転覆を企てた由井正雪(慶長10年〈1605年〉〜慶安4年〈1651年〉)と、槍の名手・丸橋忠弥(生年不詳〜慶安4年)らによる慶安事件を扱った物語です。
主な一席
1席怪僧善達
芝の増上寺で、京都の親寺へ300両を届ける使いの引き受け手が誰もいない中、大黒堂の別当・善容の徒弟である善達が名乗り出ます。旅に出た善達は、赤羽橋で見かけた飛脚の男につきまとわれます。振り切ろうと足を速めても相手は先回りし、行き先も金のことも知られていました。宇津ノ谷峠で、男は自分が護摩の灰であること、紀州から徳川へ納める軍用金3000両を奪う計画であることを明かし、京都まで自分を連れて逃げてくれと持ちかけます。分け前の交渉が決裂すると、男は信州上田・真田幸村の家来、高坂の甚内だと名乗り、善達も、大坂落城で討ち死にした大坂七手組の総大将・薄田隼人正兼相の忘れ形見だと名乗り返します。二人が斬り合いを始めたところへ紀州の金飛脚が登っていくところで一席が終わります。
成立と背景
『浪曲・怪談』は、この一席のあと、善達が知恩院へ上納金を届け、帰り道で護摩の灰や追い剥ぎを退治し、その様子を見ていた由井正雪に誘われて一味に加わると記しています。歌舞伎では河竹黙阿弥の『樟紀流花見幕張』として演じられます。
浪曲特有の「道中付け」——地名を洒落や縁語でつないで道のりを聴かせる部分——が入るのがこの演目の特徴です。
演じてきた人
浪曲では初代木村重松(明治10年〈1877年〉〜昭和13年〈1938年〉)と二代目重松(明治37年〈1904年〉〜昭和41年〈1966年〉)が得意としました。
ほかの芸能でも演じられます
この演目は講談でも演じられています。同じ題材でも、 芸能によって筋の運びや読みどころが変わります。
- 講談「慶安太平記」
才知に優れた由井正雪が幕府転覆を企て、丸橋忠弥ら多彩な人材を集めて計画を進めるが、仲間の口論がもとで発覚し一味が捕らえられる連続物。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
- 文化デジタルライブラリー(この演目の公演記録)
国立劇場・国立演芸場などでの上演記録です。いつ・どこで・誰が演じたかが分かります。
浪曲は演者によって筋や節の細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 浪曲・怪談 知っておきたい日本の古典芸能/瀧口雅仁 編著(丸善出版・2019年)
- 浪曲論[増補改訂版]/稲田和浩(彩流社・2022年)
上の本に書かれている事実をもとに、文章は書き起こしたものです。本の文章は転載していません。

