落語の演目

王子の狐おうじのきつね

滑稽噺化かし合い王子江戸上方落語が原話

娘に化けた狐を、逆に化かして料理屋に置き去りにする男。あとで祟りを恐れて詫びに行きます。

あらすじ

王子稲荷への参詣の帰り道、男は野原で狐が娘に化けるところに出くわします。化かされたふりをして親しげに声をかけると、女は喜んで応じ、二人は王子の料理屋「扇屋」の二階に上がります。

女は油揚げではなく天ぷらを所望し、酒に不慣れなまま酔って眠り込みます。男はこっそり座敷を抜け出し、勘定は連れが払うと言い残して、玉子焼きの折り詰めをもらって帰ります。

女中が起こして勘定を求めると、女は正体を現します。店の者が打ちすえようとしますが、狐は屁を放って窓から逃げます。主人は相手が稲荷の使いだったと悟り、詫びのため店の者を稲荷へ参らせます。

男が持ち帰った折り詰めを友人に渡そうとすると、友人は祟りを恐れて受け取りません。怖くなった男は翌日、詫びの品を持って王子へ行き、狐の穴の前で子狐に出会います。

子狐が持ってきた詫びの品を見た母狐が、馬の糞かもしれないから食べてはいけないと言い聞かせます。

成立と背景

初代三遊亭円右が上方の「高倉狐」を東京に移したものとされます。

王子は江戸から明治初期にかけて森や林に囲まれた土地でした。王子稲荷は関東では常陸笠間の紋三郎稲荷と並ぶ神社とされ、前方の「装束榎」という大木には毎年大晦日の夜に関東一円の狐が集まり狐火が見えたと伝わります。安藤広重がその様子を「王子装束榎」に描き、狐火の多少で翌年の稲作の豊凶を占う習慣が明治まで残っていました。

作中の料理屋「扇屋」は実在し、十四代目が王子駅前で営業していました。王子稲荷を舞台にした噺には「今戸の狐」「紋三郎稲荷」などもありましたが、今はほとんど演じられません。

演じてきた人

八代目春風亭柳枝の口演が知られ、定本とされます。以後この演目を十八番とする演者はいないものの、今もよく演じられています。

この演目を調べる・聴く

落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。

出典

  1. 落語名作200席 上(角川ソフィア文庫)京須偕充KADOKAWA2014年
  2. 落語百選 春(ちくま文庫)麻生芳伸 編筑摩書房2004年

上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

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