饅頭怖いまんじゅうこわい
別題: 饅頭こわい
怖いものを言い合う席で、一人だけ饅頭が怖いと言い出した男がいます。
あらすじ
若い者たちが集まって、何がいちばん怖いかを言い合います。青大将、蚯蚓、蛇、蛙、蜘蛛、蟻、馬と、それぞれ思い思いのものを挙げます。
一人だけ、怖いものは何もないと強がる松がいましたが、しつこく聞かれ続けて、実は饅頭が怖いと白状します。湯気の立つ饅頭屋の前は目をつぶって逃げ出すほどで、法事の配り物を見ただけでも寒気がすると語り、隣の部屋で寝込んでしまいます。
面白がった仲間たちは松を懲らしめようと、それぞれ饅頭を買ってきて枕元にずらりと並べます。起こすと、松は怖い怖いと言いながら饅頭を次々に頬張り、懐や袂にまで入れて持ち帰ろうとします。本当は好物で、みんなをだまして饅頭を手に入れる算段でした。
だまされたと気づいた仲間が、本当に怖いものは何だと聞くと、饅頭を満足するまで食べた松が「あとは、お茶が怖い」と答えます。
成立と背景
落語研究家・飯島友治によれば、原話は中国の笑話集『五雑俎』第十六巻にあり、寛文元年(1661年)に日本で翻刻されてから一口噺として広まりました。初代烏亭焉馬が編んだ『落噺六義』に「まんちう」という小噺があり、高座にかかったのは文化年間です。
「お茶がこわい」という言い方は、日常語として定着しているほどです。この噺は、「桃太郎」「浦島太郎」と同じように民話的な落語とされます。
演じてきた人
林家たい平は、立川談志がこの噺を演じており、この噺が大好きだと語っていたと述べています。
本によって違うところ
落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。
- 枕元に並べられた饅頭の種類。『落語百選 春』は葛饅頭・唐饅頭・蕎麦饅頭・田舎饅頭・栗饅頭の5種類を挙げ、『はじめて読む 古典落語百選』はそば饅頭と栗饅頭に触れています。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『落語百選 春(ちくま文庫)』麻生芳伸 編、筑摩書房、2004年
- 『はじめて読む 古典落語百選』林家たい平、リベラル社、2021年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

