笠碁かさご
待ったをめぐって絶交した碁敵の二人が、雨の三日目に我慢できなくなります。
あらすじ
長年の碁敵である二人が、対局中の「待った」をめぐる口論から絶交します。待ったなしで打とうと自分から言い出した側が、形勢が悪くなると待ってくれと言い、相手が拒んだのがきっかけです。口論では、金を貸したときに待ったと言ったかとか、大掃除の手伝いにそば一杯も出したことがあるかといった話まで持ち出されます。
雨が三日降り続き、二人とも退屈して、相手が訪ねてくるのを心待ちにするようになります。出かけようとした一方は、傘が一本しかないと女房に止められ、以前旅で使った笠をかぶって出ます。
笠をかぶった男は相手の家の前を何度も行き来します。家の中の相手はそれをのぞきながら、碁盤を外から見えるところに出して待ちます。とうとう我慢できなくなった一方が「ヤイ、ヘボ」と声をかけ、どちらがヘボか勝負しようということになって、二人は碁を打ち始めます。
対局中、碁盤の上に水がぽたぽたと落ちてきます。雨漏りかと拭いても止まらず、笠をかぶったままだったことに気づきます。
成立と背景
安藤鶴夫『落語鑑賞』によれば、三代目柳家小さんが上方からこの噺を移して演出を練り上げました。同書は、落ちの型を「トタン落ち」に分類しています。
碁を題材にするため老練な演者でないとこなせず、若手向きではない噺とされます。
演じてきた人
五代目柳家小さんの口演が知られ、抑え目の運びのなかに心理を浮き彫りにする演出でした。壮年期は、歩くありさまや高笑いで滑稽味を強く出していたとされます。
本によって違うところ
落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。
- 男がかぶる笠の由来。『落語名作200席 上』は身延山参詣に使った笠、『落語百選 夏』はおととし大山へ行ったときの笠、『古典落語(続々々)』はいつか大山へ行ったときの笠としています。
- 登場人物の設定。『落語百選 夏』は安藤鶴夫『落語鑑賞』の記述として、家の主人を唐木商(五十五くらい)、訪ねて来る側を出入りの古物商(四十三)としています。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『落語名作200席 上(角川ソフィア文庫)』京須偕充、KADOKAWA、2014年
- 『落語百選 夏(ちくま文庫)』麻生芳伸 編、筑摩書房、2004年
- 『古典落語(続々々)』興津要 編、講談社、1973年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

