道具屋どうぐや
伯父に道具屋を任された与太郎が、客の言葉を取り違えては商売にならないやりとりを続けます。
あらすじ
家主の伯父は、路上での道具屋がつらくなり、副業を頭の弱い甥の与太郎に任せてみることにします。隣で店を出している古道具屋の吉兵衛が面倒を見てくれる約束です。ところが与太郎は、店を開く前の掃除から手順が逆で、泥水を跳ねさせてしまいます。
客が鋸を見せろと言えばタケノコかカズノコかと聞き違え、品物の焼きが甘いと難をつけられると、伯父さんが火事場で拾ってきたものだからと的の外れた返事をして客を怒らせます。隣の道具屋は、客に品物の欠点を自分から言うと冷やかされて帰られてしまうと注意しますが、与太郎はその符牒の意味を取り違えて、また噛み合わない受け答えをします。
本を買いに来た客には、その本は読めません、表紙ばかりですからと答えます。脚が一本取れて二本足になった燭台は、塀に立てかけて立っているだけなので、塀ごと買っていけと勧めます。錆びついて抜けない刀は、客と力任せに引っ張り合っても抜けず、抜けないはずです、木刀ですからと答えます。
客がすぐ抜けるものはないかと聞き、与太郎が「お雛様の首の抜けるのがあります」と答えるくだりが、この噺を代表するサゲとされます。
成立と背景
与太郎噺の代表格で、前座噺としても重宝されます。筋立てには理屈の通らないところがありますが、与太郎を置いておける世の中のかたちごと笑う噺だという見方があります。
笑いが多く人物の出入りも賑やかで、切れ場が多いので時間を伸縮でき、時代設定も融通が利くため年中演じられます。上演回数では最上位に格付けされ、前座から真打まで手がけない噺家はほとんどいません。
演じてきた人
五代目柳家小さんの与太郎はいちばん素朴で、弱い者を殊更に道化にするあざとさがなかったとされます。五代目小さんは与太郎の年齢を三十六歳とし、三遊亭圓朝はこの与太郎を四十二、三歳と前置きして演じたという逸話が伝わります。
本によって違うところ
落語は演者や本によって細部が変わります。読んだ本の記述が食い違ったところは、どちらかに決めずに並べています。
- 『落語百選 秋』には、毛抜きを買いに来た隠居が世間話のように与太郎の身の上を聞き出す場面、刀や鉄砲の値段のやりとり、汚い笛の中を指で掃除しようとして指が抜けなくなった侍から代金を屋敷まで取りに行き、与太郎自身が窓格子に首を挟まれる場面まで入ります。手元のテキストはその直後で途切れており、結びの文言は確認できませんでした。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『落語名作200席 下(角川ソフィア文庫)』京須偕充、KADOKAWA、2014年
- 『落語百選 秋(ちくま文庫)』麻生芳伸 編、筑摩書房、2004年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

