山ノ内一豊の妻やまのうちかずとよのつま
貧しい侍の山ノ内が、妻の用意した金で窮地を切り抜けます。講談の『山内一豊の妻』と同じ人物を扱いますが、妻の名も金高も舞台も異なります。
一席物(一席で完結する話)。系統は実録物。
あらすじ
山ノ内が硯箱を引き寄せ、涙を流しながら三行半の離縁状を書きます。薬を持って来た女房の梅ヶ枝は、三十五両の金がなければ夫の武士道が立たないと知り、離縁状を突き返して手立てを探します。
金を工面した山ノ内は、遅れてはならじと梅ヶ枝に告げ、五十両を懐にして墨股河原へ走ります。河原の入口では、馬喰の亀が約束の三十五両を手にした伊之助に刀を向けられているところで一節が終わります。
成立と背景
講談では『山内一豊の妻』として、妻の千代が鏡の裏に隠していた金五枚で名馬を買い、織田信長の馬揃えで認められる話になっています。浪曲のこの一節は、妻の名が梅ヶ枝、金は三十五両、舞台は墨股河原で、講談とは筋立てが異なります。
演じてきた人
初代天中軒雲月。『浪曲事典』の「浪曲名作抄」は、初代天中軒雲月の「山ノ内一豊の妻」を収めています。
ほかの芸能でも演じられます
この演目は講談でも演じられています。同じ題材でも、 芸能によって筋の運びや読みどころが変わります。
- 講談「山内一豊の妻」
貧しい侍が名馬を買えずに帰ると、妻が鏡の裏に隠していた金を差し出す。その馬で信長の馬揃えに出て認められる一席。
同じ山内一豊を扱うが筋立てが違う。講談は妻を千代とし、鏡の裏の金五枚で名馬を買って織田信長の馬揃えに出る話。『浪曲事典』が収める初代天中軒雲月の一節は、妻を梅ヶ枝、金を三十五両とし、舞台は墨股河原である。(講談事典・浪曲事典)
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
浪曲は演者によって筋や節の細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 浪曲事典/安斎竹夫 編・著(日本情報センター・1975年)
- 講談事典/瀧口雅仁(丸善出版・2023年)
上の本に書かれている事実をもとに、文章は書き起こしたものです。本の文章は転載していません。

