浪曲の演目

岸壁の母がんぺきのはは

新作流行歌が原作シベリア戦後舞鶴実在の人物が題材親子戦争引揚船手紙

シベリアに抑留された息子の帰りを待ち、引揚船が入る舞鶴の岸壁に立ち続けた母の物語です。実在の人物がモデルとされます。

一席物(一席で完結する話)。系統は新作

あらすじ

出征して4年、終戦後は便りの絶えていた息子・信吉から、シベリアの奥地で鉄道敷設の労働に就いているという手紙が母のもとに届きます。手紙には、毎朝5時と夜8時に日本の母へ挨拶を送っているとありました。母と娘の里子は、日本とシベリアの時差を3時間と決めて、同じ時刻に挨拶を返すようになります。

ソ連からの帰還が始まり、母は舞鶴へ迎えに行きますが、最初の帰還船に信吉の姿はありません。以後、船が入るたびに岸壁に立ち、そのたびに一人で帰る日々が続きます。同じ村から出征した松山の金二は帰還しますが、待っていた父はすでに亡くなっていました。迎える人のいない金二と、帰る人の来ない母が連れ立って故郷へ戻ります。

やがて、シベリアで信吉と同じ病院にいた山田という兵士が訪ねてきて、信吉が病で歩けず帰還の順番が来ても帰れずにいること、それでも毎朝毎晩の挨拶を続けていることを伝えます。ひと月、半年、一年、そして十年。信吉は帰って来ません。

成立と背景

戦後に流行歌として歌われた「岸壁の母」がもとにあります。太平洋戦争後のシベリア抑留と、引揚船で帰還する兵士とその家族を題材にしています。

母親のモデルは、実際にソ連からの引揚船が入港する舞鶴の港に立ち続けた端野いせ(明治32年〈1899年〉〜昭和56年〈1981年〉)とされます。息子の新二については戦後も生存していたなど諸説がありますが、母子が再会することはありませんでした。

演じてきた人

『浪曲・怪談』が収めているのは、「母もの」を得意とした天津羽衣の口演によるものです。

この演目を調べる・聴く

浪曲は演者によって筋や節の細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。

出典

  1. 浪曲・怪談 知っておきたい日本の古典芸能瀧口雅仁 編著丸善出版2019年

上の本に書かれている事実をもとに、文章は書き起こしたものです。本の文章は転載していません。

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