落語の演目

米搗の幽霊こめつきのゆうれい

滑稽噺幽霊食べ物奉公人

別題: 信濃者、禍屋の幽霊

食を止められて死んだ米搗きが、幽霊になっても飯を食いに出る話。

あらすじ

信濃屋に奉公する米搗き職人の久蔵は、一度に二升もの飯を平らげる大食いでした。あまりの食べっぷりがたたって、とうとう胃を悪くしてしまいます。

医者からは、飯を食べることを固く禁じられ、かゆをわずかに与えられるだけになりました。ひもじさに耐えかねた久蔵が「食わせてください」と泣きついても、信濃屋は本人のためだからと、飯櫃を戸棚に入れて鍵をかけてしまいます。

久蔵は夜中にこっそり台所へ忍んで行きますが、鍵のかかった戸棚を開けることができません。そのうちに病はいよいよ重くなり、久蔵はとうとう息を引き取ってしまいました。

ある晩、番頭の善兵衛が水を飲みに台所へ行くと、久蔵の幽霊が現れ、飯櫃に手を突っ込んでむしゃむしゃと食べていました。善兵衛は肝をつぶして主人に報告します。主人は口止めをしましたが、うわさはたちまち広まり、奉公人が次々と暇を取ってしまいました。

本当に幽霊が出るのか確かめようと、主人が夜の台所で見張っていると、はたして久蔵が現れてむしゃむしゃとやり始めます。「なんだ久蔵、わたしの見ている前でそんなことをして。だいいち、お前は死んだ者だろう」と問いただすと、久蔵はこう答えました。「なあに、信濃者でございます」

成立と背景

江戸時代には、信濃者ということばが大食いの人を指す代名詞になっていました。この噺のサゲは、死なないという意味の「死なぬ」に、出身地を表す「信濃」を重ねたしゃれになっています。

この演目を調べる・聴く

落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。

出典

  1. 増補 落語事典東大落語会 編青蛙房1979年

上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

← 落語の演目一覧へ