故郷へ錦こきょうへにしき
母に恋わずらいをした息子のために、伯父が一度だけの添い寝を取り持つ話。
あらすじ
父親を早くに亡くし、女手ひとつで育てられた息子が、恋わずらいで寝込んでしまいました。伯父が問いつめても相手をなかなか明かしませんでしたが、とうとう自分の母親だと白状します。
伯父は驚きましたが、息子がかなえられなければ死ぬとまで言うので、母親を説き伏せて、たった一晩だけともに寝床に入らせることになりました。伯父が帰ったあと、息子は風呂に行き、風呂敷包みを抱えて二階へ上がりましたが、なかなか降りて来ません。
ようやく二階から降りてきた息子の姿は、金襴の羽織に長袴という、武田勝頼を思わせるものものしいいでたちでした。母親はその衣装を脱がせてやり、二人で床をともにします。
ことが済んだあと、母親が不思議そうに「どうしてあんなかっこうをしてたの」と尋ねると、息子は真顔でこう答えました。「だっておっかさん。故郷へは錦を飾れといいます」
成立と背景
上方に伝わるバレばなしのひとつです。母と子の関係そのものを正面から題材に取り上げた落語はきわめてめずらしく、この噺はその数少ない例のひとつに数えられています。類例の少なさが際立つ噺です。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『増補 落語事典』東大落語会 編、青蛙房、1979年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

