逸見十郎太へんみじゅうろうた
酒の席で漏らしたのろけ話を、当の相手に聞かれてしまう話。
あらすじ
二人の車夫が、生まれて初めて入った西洋料理店でミートボールを食べながら酒を飲んでいるうち、わずかな酒でつい口が軽くなりました。
仲間の一人が、船頭仲間と、番町に住む陸軍大将・逸見十郎太の妻との間柄を、面白おかしくしゃべってしまいます。ところが、それを物陰で聞いていたのは当の逸見十郎太その人でした。
逸見は仕込み杖を手に屋敷へ戻り、仲立ちをしていた婆から事の次第を確かめると、留吉を呼びにやらせます。急いで駆けつける道すがら、待ち伏せして切りつけました。
立ち回りの末、留吉の首を持ち帰った逸見は、妻の徳を相手に酒を飲み始めます。「この包みの中にはそちの大好物がある。これを肴に一献すごしゃれ」と包みを開けると、中から留吉の首が転がり出ました。
「あれえ」と叫ぶ徳に、逸見は「怖がることはない。性根をすえて、よっく見よ」と促します。徳は震えながら言いました。「ひどいことをなさいます。それは……あっ、おまえは留さん。まあ情けない姿におなりだね。おまえばかりは殺しはせぬ、わたしもおっつけまいります。三途の川で待っていてくださんせ」
逸見は妻の言葉に怒り、こう言い放って大見得を切りました。「何をのめのめとのろけておるか。不義の成敗、いたしてくれん」
成立と背景
芝居ばなし「西南軍記」の一編です。六代目桂文治が得意とし、八代目文治もときに演じました。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『増補 落語事典』東大落語会 編、青蛙房、1979年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

