佐渡情話さどじょうわ
世話物民話が原作お光吾作越後佐渡嫉妬信仰と霊験悲恋佐渡おけさ法華経盥の舟唄入り
佐渡の娘お光と、越後柏崎の漁師・吾作の悲恋を描きます。民謡「佐渡おけさ」を取り入れ、「唄う」浪曲として受け入れられた演目です。
一席物(一席で完結する話)。系統は世話物。
あらすじ
柏崎から漁に出て時化に遭った吾作は、佐渡の漁師・茂平とその娘お光に助けられます。吾作とお光は将来を約束しますが、吾作はいったん柏崎へ帰ります。
島でお光に思いを寄せる七之助は、返事をくれないお光に迫って拒まれます。お光は吾作に会いたい一心で、盥を舟にして夜の海を渡るようになりますが、七之助が盥を壊してしまいます。お光は吾作の子を産みますが、心を病んで父の茂平のことも見分けられなくなります。
一年後、吾作が佐渡へ迎えに来てもお光は気づきません。通りかかった僧の唱える法華経の力で、お光は正気に戻ります。
成立と背景
佐渡に伝わる、島の娘と他国の男の悲恋の民話がもとです。新潟県の農家に生まれた浪曲師・寿々木米若(明治32年〈1899年〉〜昭和54年〈1979年〉)が、その民話と民謡「佐渡おけさ」を素材につくり上げました。『浪曲論』は、昭和5年(1930年)にテイチクレコードの依頼で、米若が父から聞いた民話をもとに書いたと記しています。
台本は米若がレコーディングの日程に合わせて一晩で仕上げたと言われ、節は相三味線で妻の吉川小千代の協力でできました。当初はレコード用の短いもので、のちに浪曲研究家の本多哲が脚色して一席の形になりました。昭和11年(1936年)には日活で映画化されています。
「読む」講談、「唸る」浪曲に対して、この演目は民謡を取り入れて「唄う」浪曲として受け入れられました。作中で節に乗るのも「佐渡おけさ」の文句です。歌謡曲では美空ひばりが「ひばりの佐渡情話」(1962年、作詞・西沢爽、作曲・船村徹)を歌っています。
演じてきた人
寿々木米若。作者本人が代表的な演者です。ヒット後は巡業でこの演目ばかりを求められましたが、実際には「唐人お吉」「吉田御殿」など多くの持ちネタがありました。米若の啖呵は訛りが強く、後進の浪曲師も訛りごと写して演じていると『浪曲論』は記しています。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
浪曲は演者によって筋や節の細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 浪曲・怪談 知っておきたい日本の古典芸能/瀧口雅仁 編著(丸善出版・2019年)
- 浪曲論[増補改訂版]/稲田和浩(彩流社・2022年)
上の本に書かれている事実をもとに、文章は書き起こしたものです。本の文章は転載していません。

