月の面影つきのおもかげ
身投げを止められた若旦那が、僧の古歌に諭される話。
あらすじ
夷川のほとりで、一人の僧が、川に身を投げようとした若い男を、背中からとっさに抱き止めました。理由を尋ねると、男は船場の商家の若旦那で、北野新地の芸妓に夢中になり、親の金二百円を盗み出して身請けしたのだといいます。
ところがその芸妓には別に情夫がいて、駆け落ちされてしまいました。若旦那は取り返しのつかないことをしたと気づきましたが、親の家に合わせる顔がなく、死ぬ気になっていたのです。
話を聞いた僧は、若旦那に二百円を与え、家に帰って親孝行をするようにとだけ言い残し、名も明かさずに立ち去っていきました。若旦那が家に帰って大旦那に事情を話してわびると、大旦那は若旦那と番頭に、すぐにその僧を探し出すよう命じます。
二人が身投げのあった場所の近くを探すと、竹藪の中に菰が一枚敷いてあるだけで、僧の姿はどこにもありません。そばに丸い面桶が落ちていたので拾い上げると、裏に何か書きつけてありました。
そこには「池の面に夜な夜な通う月なれば水も濁さず影も残さず」と記されていました。番頭がこう言いました。「こりゃ東海寺沢庵禅師の古歌で、名高いものです」
若旦那はこう言いました。「沢庵禅師の古歌とあれば親孝行せずばなるまい」
成立と背景
上方に伝わる噺です。明治四十一年六月発行の雑誌『はなし』に、桂米団治による口演の速記が掲載されています。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『増補 落語事典』東大落語会 編、青蛙房、1979年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

