布引の三ぬのびきのさん
別題: 布引、源平の産
義太夫の師匠と大工の夫婦が、寒空の流しで難儀する話。
あらすじ
義太夫を教える女師匠の竹本小まんは、弟子である大工の政吉といい仲になりました。母親は反対しましたが、棟梁がとりなして、二人は夫婦になります。
ところが政吉になまけ癖がつき、小まんが流しをして暮らしを支えるようになりました。そのうちに小まんは臨月の大きな腹をかかえるまでになります。
十二月の寒い晩、政吉に強く頼まれて、小まんは大きな腹を抱えたまま一緒に流しへ出ました。途中で腰が痛むというので、政吉は小まんを先に帰らせ、自分は棟梁の知り合いの質屋に忍び込もうとします。
これに気づいた小まんは、それなら私が入りましょうと申し出て、質屋の引窓からひもにぶらさがり、台所へおりようとしました。ところが細引きが途中で切れてしまい、落ちた拍子に腰を強く打って、その場で赤子が生まれてしまいます。
気を失いかけている小まんに向かって質屋の主人と番頭が「小まんやあい、しっかりせい」と呼びかけると、小まんはうっすら目を開け、うわ言のようにこうつぶやきました。「御台様、白旗お手に入りましたか、ととさんかかさん、太郎布どこに……」
「おお、そりゃ布引の三じゃな」と言われた小まんは、こう答えました。「いいえ、細引の産でございます」
成立と背景
布引の三とは、浄瑠璃『源平布引滝』の三段目を指す言葉です。今日ではこの言葉を知る人が少なく、サゲの意味も通じにくくなっています。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『増補 落語事典』東大落語会 編、青蛙房、1979年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

