紋三郎稲荷もんざぶろういなり
別題: 紋三郎
狐の皮を着た侍を狐と思い込んだ駕籠屋が、丁重に運ぶ話。
あらすじ
常陸国笠間の城主、牧野越中守貞明に仕える山崎平馬という侍がいました。江戸への勤番に出るとき、風邪のため同僚より二、三日遅れてひとりで出発することになります。
また風邪をひかないようにと、狐の皮でつくった胴服を包んで持って出かけました。途中、松戸まで八百文で行くと駕籠屋が言うので、酒手をつけて一貫文で乗ることにします。
平馬がうとうとしていると、駕籠屋が「きょうの客は値切らずに酒代までくれた。ことによると紋三郎稲荷のお使いではないか」と話しているのが聞こえました。からかってやろうと、平馬は狐になりすまします。
松戸の本陣の主人は紋三郎稲荷をたいそう信仰しており、駕籠屋から話を聞くと平馬を下にも置かないもてなしぶりでした。しまいには、拝みに来る近所の者まで現れます。
いたずらが広まりすぎて発覚したらたいへんだと、平馬は夜中にそっと本陣を抜け出しました。すると庭の稲荷のほこらから、夫婦の狐がちょこちょこと出てきて、平馬のうしろ姿をじっと見送ります。
見送りながら、狐たちはこうつぶやきました。「化かすのは人間にはかなわねえ」
成立と背景
この噺は品川の円蔵からはじまり橘家円玉へと受け継がれ、それを故円歌が教わって演じました。原話は寛政十年に出た「無事志布意」に載っている「玉」とされています。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『増補 落語事典』東大落語会 編、青蛙房、1979年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

