落語の演目

いが栗いがぐり

滑稽噺女房

山中で道に迷った旅人が一夜の宿で恐ろしい目に遭い、翌朝まで栗のいがに振り回される話。

あらすじ

旅人が甲州の山中で道に迷いました。さまよい歩くうち、荒れた辻堂の前で、ぼろの衣をまとい、ひげぼうぼうのいが栗頭の坊主が何か唱えごとをしているのに行き会います。声をかけても返事がなく、気味悪くなってそのまま先を急ぎました。

一軒のあばら屋を見つけ、一晩泊めてほしいと頼みます。出てきた老婆は、あの場所に近寄らなければこんな怖い思いをせずに済んだのにとこぼしながらも、渋々家に入れてくれました。

わけを尋ねると、老婆は娘と二人暮らしで、夜八つ時分になるときまって恐ろしい坊主がやって来て娘の枕もとに座り、娘がひどく苦しめられる、そのために村にもいられなくなってこんな辺鄙な場所に住んでいるのだと打ち明けます。

旅人はどんな恐ろしい目にあってもかまわないと言って泊めてもらいました。夜がふけて八つの鐘が鳴ると、娘が「うーん、うーん」とひどくうなり出します。目を開けると、昼間見たいが栗頭の坊主が娘の枕もとに座り、頭の上に手をかざしていました。

夜が明けると旅人は、娘の病を治してやろうと表へ飛び出し、昨日の道を戻ります。例の辻堂には、変わらずいが栗の坊主が腰を掛けていました。旅人は「おまえがそんな馬鹿な真似をするから、かわいそうにあの娘は死んでしまった」と食ってかかります。

坊主は「え、死にましたか」と言ったかと思うと、みるみる姿が崩れて一つの白骨になってしまいました。旅人が老婆の家に戻ると、娘はずいぶん具合がよくなっており、三日目にはすっかり治りました。

喜んだ老婆は、ふつつかな娘だが女房にもらってくれないかと持ちかけ、旅人も満更ではなく承知します。母娘は村の人たちに迎えられてもとの住まいに戻り、日を選んで祝言を挙げました。

その晩、天井裏でネズミが騒ぐ音がしたと思うと、娘が「あいたたた」と声を上げます。「あっ、危ない、天井のネズミの穴に詰めてあった栗のいがが落ちてきた」。男はそれを見て、こう言いました。「うーん、まだいが栗がたたってるか」

成立と背景

この噺は「五光」という先行する別の演目を、二代目円馬が改作してつくりあげたものと伝えられており、初代三遊亭円左がこれを得意にして高座にかけていたということです。

この演目を調べる・聴く

落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。

出典

  1. 増補 落語事典東大落語会 編青蛙房1979年

上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

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