強欲五右衛門ごうよくごえもん
流れてきた長持を引き上げた欲深い男が、中身をめぐって騒ぎになる話。
あらすじ
強欲者として知られる五右衛門という男が、水害で川を流れてくる品物を次々に拾い集めていました。そこへ大きな長持が流れてきましたが、さすがに一人では引き上げられません。
通りかかった仏の又市に手伝ってもらい、ようやく長持を引き上げます。ところが五右衛門が「さっさと立ち去れ」と言い出したので、又市は腹を立て、中身を確かめようとしました。
五右衛門は「ふとんだ」ととぼけますが、又市がそれでも構わず実際に開けてみたところ、本当にふとんが入っており、その下からは息も絶え絶えの老婆が現れたのでした。老婆はひどく衰弱している様子でした。
五右衛門は老婆を川へ捨てようとしましたが、又市が助けて自分の家へ連れ帰り、介抱すると二、三日で元気になりました。聞けば庄屋の母親で、死んだものとあきらめられていた人でした。庄屋は大喜びし、礼として五十両を又市に渡そうとしますが、又市は受け取ろうとしません。
押し問答をしているところへ五右衛門がやってきて「そんなにいらないのなら、おれがもらおう」と口をはさみます。あきれた又市が五右衛門とけんかを始めると、庄屋が仲裁に入り、金を淵へ投げ込んで二人が川に飛び込み、勝った方がもらうことにしようと裁きをつけました。
泳ぎの得意でない又市はあきらめますが、庄屋はこっそりと「なあに、金はこちらにある。投げ込んだ財布の中身は石や瓦だ。五右衛門は流されて死んでしまうだろう」と企んでいました。ところが五右衛門もさる者、財布をくわえて浮かび上がってきます。
流れてきた葛籠の下敷きになって目を白黒させている五右衛門を見て、岸では「強欲五右衛門、財布の中は石や瓦じゃ」「なに、石瓦の五右衛門じゃ」「おお、気楽なやつじゃ、笑ってやれ」と大勢が笑いました。五右衛門はこう言い返します。「葛籠負うたがおかしいか」
成立と背景
文政から天保にかけて上方ではやった、実話そっくりに仕立ててつくる「出しものばなし」の一種である「石川の洪水」という噺が、この落語のもとになったのだと考えられています。
サゲは、歌舞伎の芝居「釜淵双級巴」で石川五右衛門が口にする有名なせりふを踏まえたものです。もとは上方の噺でしたが、三代目三遊亭円馬がのちに東京でも演じていました。
この演目を調べる・聴く
- 国立国会図書館サーチ
この演目の本・速記本・レコードの目録。誰が演じ、いつ出たものかが分かります。
- 歴史的音源(れきおん)
戦前を中心とした録音。同じ演目を誰が吹き込んだかが並びます。
- 歴史的音源(自宅で聴ける分だけ)
上の検索を、インターネット公開されている音源だけに絞ったものです。
落語は演者によって筋やサゲの細部が変わります。ここに書いたあらすじは一つの形で、 実際の高座とは違うことがあります。
出典
- 『増補 落語事典』東大落語会 編、青蛙房、1979年
上の本で確認した事実をもとに、文章は寄席ミルが書き起こしたものです。本文の引き写しはしていません。

